人間の体は脳が支配しています。脳から伝達される信号の命令を受けて身体の各器官や臓器は働いています。そこで今回は少し脳の特徴についてお話ししましょう。
さて、脳の大きさ(重さ)をご存じでしょうか?
脳の大きさ(重さ)は凡そ男性が1,400g、女性が1,250gで体重の2.5%です。脳が大きい(重たい)からと言って決して男性が女性に勝っているわけではありません。そこのところは間違えないようにしてください。
但し、男性脳と女性脳とでは元々持っている特徴に少し差があるようです。最近ではジェンダーとかLGBTとか言いますから単純に男性と女性に分けることができません。そこでここでは男性的な脳と女性的な脳と言う風にしてお話をします。
男性的な脳は偏桃体と言うところが優位に活動し、恐怖やリスク回避の行動が優先して働きます。偏桃体は感情の記憶野で、海馬と言う記憶を司る領域に近いところに存在することから記憶と感情は結びつきやすい性質を持っています。怖い記憶や楽しい記憶は良く覚えていると思いませんか? それは感情の伴う記憶は長期記憶に留まりやすいからです。(長期記憶と短期記憶の話は機会があればお話します。)また情的刺激は偏桃体を活性化するので(賦活と言いますが)注意力も向上に寄与します。
一方、女性的な脳は前頭皮質と大脳辺縁皮質が優位に活性化し、しかも左脳と右脳を繋ぐ脳梁と言う繊維が太いため右脳領域で分析した空間解析を即座に左脳の側頭葉にある言語記憶を司る言語野に結びつけることが可能です。そのことから極僅かな空間的な違和感を即座に感じ取り、言語としてその違和感を発することが可能です。(女の感とは良く言いますが、これは女性的な脳の特徴に由来するからかも知れません。)また女性的な脳は前頭皮質が優位に活性化し、この領域は高次認識機能を有しているため多次元的に物事を分析、解読する能力を持っています。また女性的な脳は大脳辺縁皮質も有意に活性化し情動的感情反応を有していることから共感性にも優れています。
即ち、このような特徴の違いから男性的な脳の持ち主は物事をシステム化・論理化することを得意としおり、一方、女性的な脳の持ち主は言語能力に優れ共感性を有しています。
従って、男女間で議論が嚙み合わない場合の(夫婦喧嘩や恋人同士の喧嘩など)理由の一つとして、男性的な脳の持ち主は女性的な脳の持ち主の話を聞いたとき、その回答に原因と解決法を求めシステマティックに述べるのですが、一方の相談した側の女性的な脳の持ち主は、決してその回答に解決方法や問題の原因究明を求めているのではなく、相談した相手に共感を求めているのです。
参考図書
1)萩原一平;脳科学がビジネスを変える-ニューロイノベーションへの応用.日本経済新聞社出版 2013;
2)岩田 誠.見る脳・描く脳.東京大学出版 2005;8
3)岩田 誠.臨床医が語る脳とコトバのはなし.日本評論社 2009;1
4)Norman Doidge.脳は奇跡を起こす.講談社 2004;
5)エレーヌ・フォックス.脳科学は人格を変えられるか.文藝春秋 2014;1
興味がありましたら是非、上記の5冊の本をお読みになって下さい。